職場の仲間ががんと診断されると誰でも驚くでしょう。しかし、日本人の2人に1人は、一生のどこかでがんと診断されるため、決して珍しいことではありません。事業主、人事労務部門、上司・同僚のそれぞれの立場から出来ることがたくさんあります。まずは慌てないことです。
がんと診断を受けた労働者が最初に悩むのは、「職場の誰にどこまで打ち明けるか」です。悪影響を恐れて職場に伝えず無理を続ける人もいます。また、精密検査中や診断直後は本人も弱気になりやすく、利用できる支援情報を知る前に早まって退職してしまうことがあります。そのため、普段から困りごとを相談しやすい職場の雰囲気をつくっておくことはとても大切です。
上司や人事労務部門の人は、もし社員から病気を打ち明けられたら、先入観を持たずに正確な状況を把握することから始めましょう。がんの治療は日進月歩なので、昔のイメージにとらわれると対応を誤ります。まず、入院の有無、治療の内容と予想される副作用、仕事への影響とその期間等について、本人を通じて主治医に確認し、職場で必要な配慮を検討します。他の職場関係者に本人の状況を伝える際は、病名を明らかにするか、誰に知らせるか等、本人の意向をよく聞くことが必要です。
本人には、傷病手当金等の公的支援制度や、会社の就業規則等に定められている支援制度を早めに伝えるとともに、今後の働き方の希望を確認します。病気や仕事にまつわる困り事は、診断直後、復職時、復職後といった時期によって変化していくため、定期的に面談をするとよいでしょう。一時的に本人の業務量を減らす場合には、カバーする同僚に過度の負担がかからないような配慮も必要です。もし社内に産業医や産業保健師がいるなら、必要な配慮や期間についてぜひ相談してください。関係者が少し長期的な視点を持ち、「この人にどう働いてもらおう?」と前向きに考えると、良いアイデアがでるようです。
事業主には、普段から互いに助け合う風土づくりや、病気になっても働きやすい仕組みづくりに向けたリーダーシップが期待されます。大切な人材を生かそうとする姿勢は必ず社員に伝わり、長期的には会社の社会的評価にもつながることでしょう。
◆厚生労働省の「治療と仕事の両立支援ナビポータルサイト」では、事業場と主治医がコミュニケーションをとるための書式、セミナー情報、両立支援に取り組む事業場好事例等が紹介されています。
https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/
◆東京都産業保健総合支援センターは、事業場からの個別相談に対応するとともに、各種研修も提供しています。
https://www.tokyos.johas.go.jp/